編集長メッセージ

私がこのメディアを
立ち上げた理由

山口一臣
IVR Knowledge Base
編集長

 そのとき、痛感したのは、患者と医療者との間に横たわる「情報の非対称性」です。

 インターネットには医療情報があふれています。しかし、その中から自分に本当に必要な情報を見つけ出し、納得して治療を選択することは決して容易ではありません。

 患者に必要なのは、情報の量ではありません。信頼できる知識です。

 そんなとき私は、数人の医師と組んで「早期発見のためのがん検診」と「万が一の時の選択肢と名医へのルート」を提供する少人数の会員制倶楽部を立ち上げたベストメディカルクラブの奥野恒久氏(元NTT DATA Inc.代表取締役)と出会いました。まったくの偶然でした。そこでIVR(画像下治療)の第一線で活躍する保本卓医師(保本IVRクリニック院長)を紹介されたのです。

 保本医師はじめ、第一線でがん難民の治療にあたる医師たちが目指していたのは、「もう治療法はありません」と告げられた患者に対して、IVRを中心とするさまざまな治療法を検討して、最後まで可能性を探り続けることでした。

 そこには、私がそれまで十分に知らなかった医療の世界がありました。同時に、患者の選択肢となりうるこの治療法が社会に十分知られていないという現実にも直面したのです。

 治療法が存在していても、その情報が患者へ届かなければ、その選択肢は「存在しない」のと同じです。

 私は長年、事実を伝え、社会に問いを投げかける仕事を続けてきました。情報が届くことで人の選択が変わる現場を見てきたからこそ、この情報格差は社会全体で解決すべき課題だと気づきました。

 私の残りの人生は限られています。この課題を放置したままでは、死んでも死にきれません。

 前出の奥野氏も実は、私とまったく同じ問題意識を持っていました。奥野氏が立ち上げた新会社ベストメディカルクラブ(BMC)は、そのソリューションのひとつとして具現化したものです。奥野氏と議論を重ね、ネット上のメディアを通じて社会へ情報発信し、裾野を広げることで救われる命が増えるのではないか、という結論に達します。

 記事コンテンツは私を中心とするジャーナリストチームが担当し、奥野氏がサポーターとしてビジネス面からメディアを支える形が瞬く間にできました。

 さらに、我々の思いを保本先生に伝えたところ、村上卓道先生(日本医学放射線学会理事長)、曽根美雪先生(日本IVR学会理事長)をご紹介いただき、医学的な正確性を担保するMedical Advisory Board(医学顧問委員会)をお引き受けいただきました。

 湧き上がる使命感と高揚感にこうした幸運な出会いが重なり、短期間でIVR Knowledge Baseの立ち上げ準備を進めることができました。

 私たちが目指すのは、特定の医療機関や治療法を推奨するメディアではありません。

 患者が信頼できる情報に基づいて、自ら考え、納得して医療を選択できる社会を支える、独立した第三者メディアです。患者と医療者、研究者、そして社会を信頼できる知識でつなぎ、新たな価値を生み出していく。未来の医療を支える知識基盤(Knowledge Base)となることを目指しています。

 そして、患者が納得して選択できる環境を整えること。これがIVR Knowledge Baseの存在意義です。

 知ることで選択肢が生まれます。

 選択肢は、人生を変えます。

 一人でも多くの患者が、「知らなかった」という理由だけで希望を失うことのない社会へ。患者として知ったことを、ジャーナリストとして社会へ。その営みを通して、患者が納得して医療を選択できる社会へ。

 それが、私の新しい使命です。

2026年10月


IVR Knowledge Base
「5つの基本原則」

以下の基本原則を遵守して、
記事を制作します。

1

正確な情報や知識を集約して
「知るためのメディア」を
めざします

読者の皆さまが正しい情報を得た結果として、
必要な検診・医療機関・治療法を自ら選択できる状態を
つくりだします。

2

メリットだけでなく、
限界・リスクも伝えます

IVRについても、適応、限界、合併症、
他の治療選択肢などを可能な限り併記します。

3

患者の体験を
「治療効果の証明」にしません

患者の体験は、あくまで一人の患者の経験として扱い、
一般化はしません。

4

特定の医師・医療機関を
宣伝することを
目的としません

個別の医師・施設を紹介する場合も、
社会的な医療情報としての価値を優先します。

5

編集記事とスポンサード・PRを
明確に区分けします

スポンサー・サービスの紹介は「Sponsored」「PR」等の表示を行い、
編集記事との境界を明確にします。

詳細はこちらでご確認ください。


その選択をした人たちの、
物語がある。

IVR Knowledge Base は、2026年10月末に本格始動します。
ステージ4の宣告を受けてもあきらめなかった患者さんたちの記録、専門医たち
の証言、そして「IVR とは何か」を知るための特集記事。
羅針盤としての情報を、これから一つずつ公開していきます。

患者さんの物語 -PATIENT STORIES-


Aさんのケース

希少がんステージ4の元甲子園球児が、4度の開腹手術と抗がん剤治療の限界を経験。2024年、肝臓に少なくとも5つの腫瘍が見つかり、医師からは「これ以上有効な治療方法は見つかっていない」と言われたが、自ら選択肢を求め全国約30カ所の医療機関を訪れ、IVRのラジオ波焼灼術(RFA)にたどり着いた。「最後は勝つ」の精神で治療に向き合う実例。近日公開


Bさんのケース

2026年、人間ドックをきっかけに前立腺がんステージ2と診断。自ら医療情報を収集し、転移を精緻に確認するため、標準治療を超えた新たな検査を受け、治療の選択肢について医師と相談し、納得して治療を選択。病を機に「患者が納得して選べる医療情報基盤」の必要性を痛感し、自らメディアの立ち上げにつながった実例。近日公開


Cさんのケース

2011年に大腸がんステージ4と診断。抗がん剤や手術を経ても肺転移が残り、「半分は自分の命をあきらめた」という状況のなかでIVRのラジオ波焼灼術(RFA)と出会う。3カ所の転移をRFAで治療し、現在も好きな酒や外食を楽しみながら元気に暮らす実例。近日公開


Dさんのケース

2013年に直腸がんと肝転移が見つかる。主治医への信頼を支えに、4度の手術や抗がん剤治療を乗り越える。途中、別の医療機関で薬の説明や診療上の対応に不信感を抱く場面もあったが、主治医とともに選択肢を探りながら治療を続けた。診断から13年、79歳となった今も元気に日常生活を送る実例。近日公開

医師インタビュー -DOCTOR INTERVIEWS-

医師インタビュー① 医師インタビュー②

医師インタビュー③ 医師インタビュー④


...続々公開

特集記事 -FEATURES-

特集1
IVR とはなにか

画像下治療という選択肢を、基礎からわかりやすく解説します。

特集2
Medical Advisory Board鼎談

村上卓道医師 日本医学放射線学会理事長
曽根美雪医師 日本IVR学会理事長
保本卓医師 日本穿刺ドレナージ研究会代表世話人


対談 -Interview-


BMCが目指す「がんを恐れない」ための『早期発見』と『名医へのルート』

IVR Knowledge Baseが生まれたのは、元週刊朝日編集長の山口一臣と元NTT DATA Inc.代表取締役の奥野恒久との偶然の出会いがきっかけだった。2人は奇しくも1960年~61年生まれの同学年で、ともに“前期高齢者”と呼ばれる年齢に達していた。

奥野も、そして山口も、それまで考えたこともなかった“がん”がいきなり身近になる体験をした。奥野はその体験をきっかけに、「早期発見のためのがん検診」と「万が一の時の選択肢と名医へのルート」を提供する少人数の会員制倶楽部「ベストメディカルクラブ(BMC)」を立ち上げ、NTT退職後のキャリアの集大成として取り組むこととした。

IVR Knowledge Base編集長の山口が、その思いを聞いた。

     ♢     ♢     ♢     ♢     ♢     ♢

山口 奥野さんがBMC創業を思い立ったのは、親しいご友人をがんで亡くされたことがきっかけだったと聞いていますが。

奥野 はい。3年前の2023年に会社の執行を退いて、(勝手に)あと10年を健康年齢と決めて、なにか社会の役に立つ仕事をしたい、少しでもいいから付加価値を生みたい、と考えていました。まさにその3年前に、親しい友人が突然大腸がんステージ4(大腸から肝臓や肺などに転移)になりました。普段、考えないようにしていた“がん”が突如、“自分事”になったことが、BMCを創ったきっかけです。

 友人は、大学病院で「これ(抗がん剤)以上の治療は無理」と言われ、極めて厳しい状況であることを知ります。本人も「どん底に突き落とされた気分だった」と言っていましたが、翌年には娘さんの結婚も控えていて、少しでも命をつなぐ治療はないかと探し回り、セカンドオピニオンに特化したある女性の医師から、他にも治療の可能性があることを知らされたのです。

 それから1年強、私は、がんステージ4治療の疑似体験をすることになりました。

山口 その「疑似体験」を通じて、いちばん感じられたことは何だったのでしょう?

奥野 治療の「選択肢」の問題です。がんになったときに選択肢を正しく理解することが第一歩だと思うのですが、その「選択肢」をがんになってから探すというのは非常に難しいということでした。

 私の友人は、たまたま偶然、先ほど申し上げたセカンドオピニオン専門の女性医師の紹介で、大変いいお医者さんたちに巡り会うことができたのですが、この“幸運な巡り会い”は誰でもできるものではありません。友人の治療のために知り合った数人の先生方と「がん患者のため、日本の医療レベル向上のため、何をするべきか」の議論を重ねた結果、BMC創業という結論が導き出されたのです。

山口 ご友人は、大学病院では「これ以上の治療は無理」だと言われたわけですよね。大学病院で「無理」と言われてしまうと、患者としては手の施しようがないと考えてしまうのですが、実際には治療の可能性はあった。奥野さんは、その医師の方々とどんな議論をしたのでしょう?

奥野 大学病院など一般的な病院で選択肢としてまず推奨されるのが「標準治療」と呼ばれるものです。標準治療はエビデンス(科学的根拠)に基づいて現在利用できる治療法の中でもっとも効果と安全性が確認されているとされ、多くは公的保険の適用範囲内で受けることができるものです。まずは、この標準治療の内容を、しっかり理解することが大事だと思います。

山口 日本全国どこでも、誰でも受けられ、保険も効く。標準治療は、医療の質の均一化を担保しているとも言えますね。

奥野 そうです。ただ、考えないといけないことが2つあります。ひとつ目は、たとえばステージ4の大腸がんで「手術できない」と「手術する」で方針が分かれる場合があることです。一般的に大規模病院は安全性を最優先して合併症のリスクや「手術で完全に取り切れる(根治できる)可能性が低い」と判断した場合は、無理に原発巣を切除しない方針をとることがあるようです。

 一方で、高度な腹腔鏡技術や多臓器合併切除の経験が豊富な外科医がいる病院では「手術可能」と判断されるケースが増えるようです。

山口 つまり、病院や医師によって判断が分かれるということですね。

奥野 はい。化学療法(抗がん剤治療)を主軸に置くか、外科手術を主軸に置くかという組み立て方も病院や医師によって異なることがあるようです。

山口 だから、セカンドオピニオンが重要なんですね。患者の立場からすると、複数の考え方を聞いて、納得した形で治療法を選びたいと思うのですが……。

奥野 もうひとつが「ガイドライン」の問題です。標準治療の指針となる「ガイドライン」は、エビデンスと学会などでのコンセンサスに基づいておよそ3年ごとに更新され、また更新の際に用いられるデータは一世代前のものだと、医師たちとの議論の中で聞いたのです。つまり、標準治療の「ガイドライン」は、日進月歩で進化する先端のがん治療とは数年間のギャップがある、ということだと思います。

山口 先端治療というとまだ試験段階という印象ですが、一定のエビデンスがあり、状況によって効果が期待できる治療や検査があるということですね。

奥野 その通り。ただ、標準治療ではない治療や検査は、保険適用外、つまり自由診療ということになります。

山口 実は私も、自らの前立腺がんで経験しました。標準的な検査の後、より精緻に転移の有無を調べる検査があることをセカンドオピニオンで知りました。健康保険が使えない自由診療でしたが、納得のいく治療法の選択のために受けました。結果は、その後の治療方針決定の安心感にもつながって、本当に受けてよかったと思っています。

 ただ、これも本当に偶然で、奥野さんに保本卓医師を紹介してもらったからできたことです。現状の日本の多くのがん患者は、“幸運な巡り会い”や“運”に命を託しているということを痛感しました。

奥野 知識のない一般的な患者さんが選択肢を理解して判断するのは至難の業です。適切でない治療法を選ぶと、むしろ命を縮めてしまいかねない。標準治療、自由診療を含めて「今できる」治療や検査にはどんなものがあるのか、どういう場合に効果があって、どういうリスクがあるのか、費用はいくらか、その治療ができる医師はどこにいるのか、信頼できる医師に相談できるのがいちばんですが……。

山口 幸い、私の主治医はセカンドオピニオンに積極的だったので、その後の治療もとてもスムーズにいっています。

奥野 そこはとても重要です。治療計画を立てる「主治医」が、さまざまな分野の最先端の治療法をすべて把握するには限界があると思っています。また、現場の医師は昼夜問わず、命を救うために頑張っているのですが、一人一人の患者に費やせる時間はどうしても限られる。主治医とは別のオピニオンがどうしても必要なんです。

山口 BMCの柱のひとつが「早期発見のためのがん検診」ですね。奥野さんは、がんは「早期発見」に越したことはないと折に触れて力説しています。その方が、治療が圧倒的に楽だし、費用的にも安く済むと。

奥野 それは、友人のがん体験を通じて得た、私の強い持論です。

 人間の体は約30兆個の細胞でできており、毎日3000億個の細胞がコピーされていると言われています。これほど多いとコピーミスも発生します。このコピーミスから「毎日5000個の『がん細胞』が発生」しているとされています。これを防ぐのは非常に難しい。だから「早期発見」がなにより大事だと思うんです。

山口 そうですね。年齢を重ねると当然、コピーミスも増えるだろうし、免疫力も低下するから、生き残る「がん細胞」の数も増える。これが、日本人の2人に1人ががんになると言われる背景です。つまり「がん」は「長寿病」でもあるんですね。

奥野 実は、今年(2026年)7月に大変悲しいできごとがありました。一緒にBMCを創った(前述の)女性医師が、がんで命を落としたのです。1年前に「上皮性尿路がん」が見つかり、すでに転移している状態でした。

山口 手遅れだった……、ということですか。

奥野 毎年PET-CTは受けていると聞いていたのですが、上皮性尿路がんは、PET-CTでは早期発見が難しいがんの一つです。しかし、「造影CT」で検査をすれば、早期発見が可能と日本泌尿器科学会のガイドラインにも検査の第一選択として推奨されています。

山口 つまり、しっかりとした検査を受けていれば早期発見も可能だったと……。

奥野 はい。PET-CTでは早期発見が難しい「すい臓がん」も、「MRCP」等が早期発見に有用と言われています。山口さんが自由診療で受けられたPSMA-PETも、まだ実施できる医療機関が限られていますが、有用な検査です。これらを組み合わせることで、がんを早期発見できる可能性が高められると考えています。

 女性医師の逝去はとても残念でしたが、とにかくがんは早期発見で救われるという信念を、また新たにすることになりました。

山口 がん検診といえばPET-CTくらいしか知りませんでしたが、検査方法によって得意な領域、不得意な領域があるんですね。それを自分自身でもおおまかに理解した上で、複数の検診の組み合わせも含めて、信頼できる医師と相談しながら進めるというのが、現状考えられる「がんで死なないため」の最善の道だということですね。

 最後に、BMCがIVR Knowledge Baseのスポンサーになった理由を教えてください。

奥野 BMCは紹介制の会員倶楽部です。いまできるベストのがん検診をご提供し、万が一の場合には、検診をした医師が、会員の方と伴走する(選択肢を共に探し、名医につなぐ)のが特徴です。100人から200人の小規模なものを想定しています。

 その一方で、明確なビジョンを持ち、社会へ発信したいとも考えています。その観点から「患者が信頼できる情報に基づいて医療を選択できる社会の実現」に向けて、経験のあるジャーナリストに客観的に情報発信をしてもらうことは重要だと考えました。それによって、少しでも救える命が増え、日本の医療のレベルアップにつながればと思います。

山口 ありがとうございます。長生きをすればいずれ「がん」になる可能性が高いのですが、「早期発見」によって救える命が増えるということですね。すべてを保険診療で賄えないかもしれませんが、「いま」若干のコストをかければ「将来」健康でいられる確率が格段にあがる。中高年層を中心に「がん検診」を受ける人が増えれば、自分の「命」も助かるし、結果的に保険診療のコスト減にもつながる。それが、私たちが目指すひとつの理想ですね。

(構成・山口一臣)